強かった雨は、いつしか優しくなっていました。
ぽつん、ぽつん、と私とあなたが入る傘の上にのり、滑り落ちていく。
滑り落ちた雨は、私とあなたの肩を濡らしました。
聴こえるのはぽつん、ぽつん、と鳴る雨の音だけでした。
いつも聴こえてくる自動車の音や、道ゆく人の話し声は聴こえなくて。
二人静かに歩いていると、
雨の音に交じって私の鼓動の音がとても大きなことに気付きました。
歩く早さはとてもゆっくりでした。
時間が止まったようにゆっくりと進む二人の足。
けれど、少しずつ変わっていく街の景色は、
確かに時間が進んでいる現実を私に教えて。
私は去りゆく景色に、後ろ髪を引かれました。
隣を歩くあなたの手が、ときどき私の手にぶつかりました。
私の心は、そのたびに大きく跳ね上がる。
繋ぎたいけれど繋げないその手に、私は胸がとても苦しくなりました。
駅が、見えて来ました。
私とあなたが向かう駅。
もうすぐ二人の時間も終わる。
駅へ着けば、
傘を閉じて、
手がぶつかることもなくなって、
少しだけ近付いた距離が、
また、
遠くなる。
私はとても寂しくて。悲しくて。
ぽろん、ぽろん、と涙がこぼれました。
だって、
もっと、
ずっと、
あなたと二人、
一つの傘に入っていたかったんだもの。
二人だけで、いたかったんだもの。
あなたが戸惑っているのが分かりました。
あなたを困らせたくない。
そう思うけれど、涙は止まらなくて。
涙を流す私を、あなたがそっと引き寄せました。
気が付けば、私はあなたの腕の中にいて。
そっと髪を撫でられました。
私は驚いて、
嬉しくて、
幸せで。
ただ、ただ、涙をこぼしました。
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